そこにあるべきであり、そこでしかない場所。時間の流れや空気の質感までも異なるように感じられる。そのような場所に出会える幸運は人生で数えるほどではないだろうか。
それは突然目の前に現れた。 私は2001年宇宙の旅で描かれたモノリスと近い感覚を受けた。 それは言語の存在しなかった世界に創造されたもののようである。 少なくともこの美しさを説明する術を、私は持たなかった。
李禹煥は何を思い、無限門を製作したのだろう。 空と木々に縁取られた芝生の中にそれは在る。 この美しい景色の中になにかを挿入するという行為は、ともすれば危険な行為にも思える。 なにか大きなものに導かれなければできないことだろう。
光や海の満ち引きにより刻一刻と移り変わる度に、無限門は凛とした表情で優しく呼応する。 気候の良いときであれば一日をここで過ごすことを直島での旅のプランとして自身を持って提案できる。